私が最初のピアノの生徒を教え始めてから40年近くが経ちました。
多くの仕事と同じように、この間実に色々なことありました。
悩んだり傷付いたり、もうこの仕事を辞めて教室を閉じてしまおうかと思ったり。
「ピアノの先生」は、決して座ってしゃべっているだけでできる優雅なお仕事ではありません。
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それでもなんとか辞めずに続けることができたのは、信頼してくれる生徒達の存在のおかげです。
そして、私は長年の経験により、一つの結論に達しました。
自分なりの「教室理念」を持つことで、教えるための「軸」のようなものを持つことができること。
それにより、ピアノ教室運営に良い効果があるということに気づいたのでした。
この項では、そんなちょっと抽象的だけれど、とても大切なことをお伝えしていきたいと思います。
目次
自分のピアノ教室の軸(教室理念)を持つ
教室理念。
はい、いきなり何か難しい話来ました。
「理念」って何でしょう?
り-ねん【理念】の意味
ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え。(goo辞書より)
例えば、受験生が受験する学校を選ぶ時、それぞれの学校が掲げる「教育理念」を参考にするのではないでしょうか。
教育理念(idea of education)
教育が到達すべき究極の理想の姿。 (コトバンク・ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典の解説)」
各学校ではそれぞれ教育方針を持ち、「このような人を育てたい」という根本的な考えを持っているはずです。
それが教育理念であり、受験生はそのあり方を参考に受験校を決定します。
企業なら「経営理念」になりますね。
社会に対する、その企業のあり方、どのような方針で社会に貢献していくのかという、根本的な考え方を表すものです。
企業や学校と比べるとはるかに規模は小さくなりますが、私はピアノ教室も同じと考えています。
ピアノという狭い教育範囲ではありますが、仮にもお金を頂いて、人を教育するということに変わりはありません。
一本筋の通った、ブレない「軸」と申しましょうか。
「私は、このような理念のもとでピアノ教室を運営しています」と胸を張って言えるような、そんな「基本理念」を持つことが大切です。
確かに、それでも教室運営ができないことはありません。
でも、「ブレない軸」を持つことのメリットは大きいものがあります。
「教室理念」を持つことのメリット
教室運営をする上で、自分の「軸」を持つことには、以下の3つの利点があります。
自分の強みを意識できる
「強み」とは、セールスポイントと言い換えることができます。
自分のピアノ教室の「強み」とは何だろうか。
星の数ほどもあるピアノ教室・音楽教室の中から、どうやったら自分の教室を選んでもらえるだろうか。
自分は、生徒たちにどのような教育を提供できるだろうか。
こういった事を意識することで、他の教室との差別化をはかることができます。
なぜなら、多くのピアノ教室は「教室理念」などは考えずに運営していると思われるからです。
かつての私がそうだったように。
教室理念を持つことは、自らの「強み」、「セールスポイント」を意識することにつながるのです。
理念に共鳴する生徒を集められる
ピアノ教室の理念とは、「どのような教室でありたいか・どんな生徒を育てたいか」を表すものといえます。
これがはっきりと自分の中に軸として定まっていると、やがて生徒たちにはっきりと伝わっていきます。
例えば、私の教室の理念とは以下のようなものです。
- 生徒を人として尊重すること
- 生徒一人ひとりの成長に寄り添うこと
- 自力で楽譜を読み、自力で音楽を形作る力を育てること
- ピアノがその人の生涯の友となるよう導くこと
あくまでも私の例ですが、参考になりますでしょうか。
もちろん、先生方によって理念は異なって当然です。
「生徒さんのご都合に極力合わせて運営します」
「コンクールで上位入賞させる教室を目指します」
「とにかく楽しい教室にします」
どれも立派な教室理念だと思います。
様々な価値観の教室があった方が、生徒たちも選びやすく、またご自分に合った教室であれば長くピアノを続けてもらえることでしょう。
生徒の都合によって振り回されることが少なくなる
昨今、ピアノ教室は地域に無数に存在します。
以前の私のように、ピアノ教室を求めて探し回った頃とは全く状況が違います。↓
何しろ生徒の数より先生の数の方が多いのではないかと言われる地域もあるほどです。
となると、中にはお客様気分といいますか、かなり自由に振る舞う生徒(の保護者)も珍しくありません。
いずれ詳しく書きたいと思っていますが、この「自由奔放な生徒たち」の存在は、多くのピアノ教室の頭痛のタネです。
◯月◯日の○時に振替レッスンをして下さい。それ以外の時間は困ります
テキストの進度が遅すぎ(早過ぎ)ます。もっと〜のように進めてください
発表会ではこの曲を弾かせてください。他の曲はイヤです
‥などのように困惑するシチュエーションがしばしば出てくることがあります。
こうした時、自分の「軸」があれば適切に対応することができるのです。
「申し訳ありませんが、我が教室では〜〜という方針で運営しております。ご理解下さいますようお願い申し上げます」
のように、教室理念は一部の生徒の保護者などからの無理な要求を、やんわりと断るための根拠となります。
こうした時にむやみに塩対応を取るのも考えものですが、「軸」をしっかりと持つことは結局他の生徒たちのためにもなり、ひいては教室を長続きさせるために有効なのです。
自分なりの教室理念の見つけ方・5つのコツ
エラそうに色々書いていますが、私だって「理念」「自分の軸」の重要性に気づいたのは教え始めて20年近くも経ってからです。
長い年月(笑)をかけて、私なりに少しずつ形になってきたものです。
これからピアノ教室を始めようとするあなたに、「教室理念」を見つけるためのコツをお伝えするなら。
以下のことを意識してみてください。
- あなたはなぜピアノの先生になろうと思ったのですか?
- あなたはどんなピアノの先生になりたいですか?
- あなたはどのように生徒たちを育てたいですか?
- あなたは生徒たちにどのようになってもらいたいですか?
- ピアノを教えるということを通して、あなたは生徒たちに何を伝えたいですか?
すぐに答えを用意する必要はありません。
学びながら、教えながら、ゆっくりと考えてみてください。
この記事では、「理念」とは物事について、こうあるべきだという根本的な考え方というお話をしました。
「教室理念」は、あなたがピアノを教えていく上での指標となるものです。
そしてそれは、ご自分の考え方や生き方そのものの本質に迫るものと言えます。
人は自分にウソはつけません。
借り物の「教室理念」では、すぐにご自身が居心地の悪い思いをされることでしょう。
長く続いているピアノ教室は、たいていその先生なりのしっかりとした理念をお持ちです。
ご自身の「軸」を持つことこそが、ピアノ教室を末長く運営していくための秘訣なのです。
今すぐでなくてももちろん構いません。
ある程度の時間をかけながら、少しずつ考えてみて下さい。
きっとあなたの教室運営に良い効果があることを確信しています。
お読み頂いてありがとうございます。