あなたがピアノ教室を開くとき、当然レッスン室にはピアノを置きますよね。
その時、グランドピアノを選ぶか、それともアップライト(縦型)ピアノを置くかで教室の方向性が変わってくる可能性があります。
なぜでしょうか。
一緒に考えてみましょう。
目次
レッスンに使うならグランドピアノがおすすめ
ピアノの内部には、ピアノ 線と呼ばれる弦がたくさん張られています。
それらはピアノの鍵盤の「数(88鍵)」と「音の高さ」に対応するように太さと長さが調節され、強い力で引っ張られています。
高い音は細い弦が3本ずつ束ねられ、中音域では2本、低い音では太い弦が1本でその役割を果たしています。
ピアノの音は、ハンマーがそれらの弦を叩くことで生み出され、その振動はピアノの底に張られた「響板(弦の振動を増幅するための共鳴体)」によって増幅されます。
以下の記事に分かりやすい図解があります。↓
https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/piano/mechanism/mechanism002.html
そして、木製の箱である楽器本体の中の空気がふるえることによって、大きな音となって人の耳に届くわけです。
音の出る仕組みそのものはグランドピアノもアップライトピアノも同じです。
ただ、弦が水平に張ってあるか、床と垂直になるように縦に並んでいるかの違いです。
グランドピアノとアップライトピアノの違いとは?
グランドピアノの方が連続打鍵の音数が多い
水平に張られた弦を下から叩く平型のグランドピアノと、垂直に張られた弦を前後運動で叩く縦型のアップライトピアノでは、アクション機構に決定的な違いがあります。
(Takagi Klavier Piano Academy ホームページ「授業内容」より)
グランドピアノでは、下から弦を叩いたハンマーがすぐに自重で戻るので、素早く次の音を出すことができます。
それに対して、アップライトピアノでは弦が縦に貼ってあるためハンマーは横から叩くことになり、どうしても戻りは遅くなります。
一般的にグランドピアノは1秒間に12〜14回、人によってはそれ以上同じ音を連続して打鍵できます。
対してアップライトピアノでは10回が限度といわれています。
グランドピアノは音色が豊か
ピアノの高音部の弦は細く短く、低音部では太く、長くなります。
ピアノは弦の長さによって音の高さが変わるため、自然とあの特殊な形になるわけです。
グランドピアノ特有の優雅なフォルムにはちゃんと意味があるんですね。
そして、グランドピアノは弦を長くすることによって、より面積の広い響板で空気を振動させることができます。
響板の面積が広いほど音は大きくなり、その分、強弱に幅が生まれます。
また、重厚な低音やキラキラした高音を出せるようになっていきます。
大きなコンサートホールなどで、横に長〜いグランドピアノを見かけることがありますね。
弦を長くすることでより大きな空気の振動を引き出して、豊かな音を響かせているわけです。
家庭用のグランドピアノでもそれなりに弦は長いです。
一番小さいグランドピアノで奥行き149〜151cm。
それに対して、アップライトピアノでは長くても131cmとなっています。(YAMAHA ホームページより)↓
http://yamaha.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/1763
メーカーによって多少違いはありますが、ほぼこのような傾向となっています。
上級者の技量に対応できるのはグランドピアノ
生徒が初心者で、弾いている曲が「バイエル」くらいの間は、アップライトピアノでもほとんど影響はありません。
でも、「ブルグミュラー」レベルを超え、「ソナチネ」に入って少したったあたりから、素早くて細かい指の動きやたっぷりした響きの音が必要な場面が増えます。
こうなると、生徒が一生懸命に弾いていても、楽器の性能がそれに応えてくれないということに。
曲が難しくなるほどに、グランドピアノなら可能な表現がアップライトピアノではできないということが増えていくのです。
ココがポイント
グランドピアノとアップライトピアノは、演奏者が上級レベルになるほど性能の違いがはっきりとしてくる
ピアノのレッスン室にグランドピアノを置くメリット
レッスン室に置かれたグランドピアノの効果は、絶大です。
私は今まで何人もの新しい生徒をお迎えしてきましたが、多くのお子さんたちは教室のグランドピアノを見て「わあ〜」と歓声を上げていました。
保護者の方も「〇〇ちゃん見て、グランドピアノだね〜」といった具合。
考えてみれば、ほとんどの日本人はグランドピアノをあまり見慣れていません。
小中学校の体育館と音楽室以外でグランドピアノをしょっちゅう見かけるという方は、クラシック音楽のファン以外ではほとんどいないのが実情ではないでしょうか。
そんな「特殊な存在」であるグランドピアノが、これから通うピアノ教室の真ん中にでんと置いてある。
生徒や保護者の方からは「このピアノ教室に入った私(の子ども)は、毎週、グランドピアノを弾くことになるのだわ」という期待感を感じてしまいます。
グランドピアノには、独特の雰囲気があります。
誰にでも持てる楽器ではない、というような特別感とでもいいましょうか(実際は多めにお金を出せば誰にでも買えるのですが)。
ということは、レッスン室にグランドピアノを置くだけで、ある程度教室を差別化することができるわけです。
「きちんとした指導をする本格的なピアノ教室」「真面目に練習する生徒の多いピアノ教室」のような演出が可能であり、それは教室運営に良い効果をもたらします。
アップライトピアノではちゃんとした指導ができないというわけでは決してありません。
ただ、上の「グランドピアノとアップライトピアノの違いとは?」で書いたように、性能面で明らかに差があるのも事実。
なのでピアノを本気で学びたい生徒にとっては、ピアノ教室のグランドピアノはマストアイテム。
彼らには、アップライトピアノでレッスンをするピアノ教室に通う選択肢はありません。
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このように、レッスン室のピアノにグランドピアノを選ぶことで得られる一番大きなメリットは、ピアノを真面目に学ぶ生徒を呼び込む効果が見込めることなのです。
ココがポイント
ピアノ教室のレッスン室に置かれたグランドピアノには、「本格的なピアノ教室」をアピールする効果が期待できる
グランドピアノのデメリットは?
グランドピアノのデメリットをいくつかあげてみましょう。
価格が高い
ヤマハの最も小さいサイズのグランドピアノ「GB1K」の価格は1,150,000円(税抜)。
こちらはヤマハのグランドピアノの中では最低価格です。
その上のスタンダードなランク「C1X」では1,750,000円(税抜)となっています。(YAMAHA ホームページより)
https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/pianos/grand_pianos/index.html
それに対して、アップライトピアノのスタンダードなタイプ「YU11」は660,000円(税抜)です。
https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/pianos/upright_pianos/index.html
場所をとる
最もコンパクトなグランドピアノ「GB1K」と、スタンダードなアップライトピアノ「YU11」のサイズを比べてみましょう。
幅 | 高さ | 奥行き | 質量 | |
グランドピアノGB1K | 146cm | 99cm | 151cm | 261kg |
アップライトピアノYU11 | 153cm | 121cm | 61cm | 228kg |
横幅はアップライトの方が長いですが、違うのは奥行き。
さらにイスに座るためのスペースが必要。
ピアノの演奏者はイスに浅く腰掛けて弾きますので、とにかく場所をとります。
音量の問題
グランドピアノは音量が出ますので、かなり防音に気を遣う必要があります。
特に集合住宅では、グランドピアノは禁止とうたうところもあると聞きます。
レッスン室にグランドピアノを置くなら、様々な防音対策が必要になってくると思われます。
ココがポイント
グランドピアノのデメリットは価格・スペース・音量
まとめ
- ピアノレッスンで使うならグランドピアノがおすすめ
- グランドピアノとアップライトピアノは、音の出る仕組みは同じ
- グランドピアノは弦を水平に張る事により素早い同音連打が可能
- グランドピアノの方が弦が長いため豊かな音色を生み出すことができる
- アップライトピアノの楽器の性能は、上級者レベルには対応できない
- ピアノ教室にグランドピアノを設置する事により、「本格的なピアノ教室」とのイメージ作りが可能
- グランドピアノのデメリットは価格・スペース・音量
私は子供の頃、父の転勤で何度もピアノ教室を変わりましたが、初めてグランドピアノが置かれた教室に通い始めた時のことは今でも覚えています。
「わぁ〜〜、グランドピアノだ!」と感動したものでした。
とはいえ、様々な事情でグランドピアノを置くことが難しい場合もあることも承知しています。
これからピアノ教室を開こうとするあなたにとって、教室に設置するピアノは大きなポイント。
この記事が、適切で無理のない選択をするための助けになれば幸いです。