一般的なピアノ教室では、生徒のタイプもバラエティに富んでいるので先生に求められる役割はいろいろでした。↓
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中級者くらいまでの生徒が多い「普通のピアノ教室」と違って、上級者向きの教室は先生に求められているレベルも高いです。
音大生や音大受験生、有名コンクールに出場するようなハイレベルの生徒を教える際に必要なスキルはどんなものか考えてみましょう。
目次
ピアノの上級者とはどんなレベル?
ピアノの上級レベルとは、どんな生徒のことを指すのでしょうか。
ひとつの例として、音大生、または音大のピアノ科を受験する生徒がそれに当たるのではないかと思います。
歴史のある日本の音楽大学のレベルは高く、在学生や卒業生が海外のピアノコンクールで上位入賞することも多いからです。
音楽大学ピアノ科の課題曲の例は以下の記事に記しました。↓
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- J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集第1巻、第2巻より1曲
- ショパン エチュード(練習曲)より1曲(テンポの遅いものを除く)
- ベートーヴェン ソナタ第1楽章(易しいものを除く)
コンクールではさらに曲が増えます。
日本最大級のピアノコンクール「ピティナ・ピアノコンペティション」のF級(高校3年生以下)では、上記のレベルの3曲のほかにもう1曲、近・現代の作曲家の作品を演奏する必要があります。
- ドビュッシー(1862〜1918,フランス)のエチュード(練習曲)、ヒンデミット(1895〜1963,ドイツ)のソナタ、邦人の作品など
このレベルの曲を3〜4曲またはそれ以上、暗譜で弾けることが、ピアノ上級者のひとつの目安だといえるでしょう。
ピアノ上級者を教えるために必要なスキルは?
実際、ショパンエチュード24曲全部を完璧に弾きこなして自分のものにしておくことは現役のピアニストでも難しいと思います。
ましてリストやらドビュッシーのエチュードとなると、白目をむきたくなるほど難しい曲のオンパレード。
当然ながらとても全部は手が回りません。
このレベルの生徒を教える時、先生に求められるのは曲をお手本のように演奏する力ではありません。
まず第一に、複雑な音のかたまりの中から、生徒の音やリズムの間違いを聴き分けて指摘できる耳が必要。
そして、長くて難しい曲の構成や解釈などを伝えて曲を完成に導く力ではないでしょうか。
先生自身の演奏力よりも生徒の力を引き出す指導力の方が大切ということです。
ココがポイント
ピアノの中級者〜上級者を教える時に必要なのは、先生自身の演奏力だけではなく曲の解釈を正しく伝え、曲を完成に導く指導力
ピアノ上級者の生徒を教えるために必要なステップは?
このような「ハイレベル層の生徒」を教えることができるようになるには何年間のピアノ学習歴が必要でしょうか。
また、どんな勉強をしておけばよいのでしょうか。
音大を卒業したのち、楽器店の講師に採用されたり自宅でピアノ教室を始めるというのが一般的なピアノの先生。
音大受験生やコンクールで上位入賞するようなピアノ上級者を教えるには、さらにピアノを深く学ばなければなりません。
「ハイレベルピアノ講師」になるためのひとつの例として、こんな王道パターンがあります。
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1海外留学
音大卒業後、あるいは在学中から欧米の大都市にある名門の音楽学校で何年か学びます。
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2欧米で活躍し実績づくり
クラシック音楽の伝統があり、ピアニストとしての活躍の機会の多い欧米で、高名な先生に師事したりコンクールに出場するなどして腕を磨きます。
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3帰国して音大講師職へ
帰国してからも演奏活動を続けながら母校の音大などのピアノ講師の職につきます。
実際にこの王道を歩んだかつての仲間たちが、コンクールのジャッジなどに名を連ねているのをみると感慨深いものがあります。
5歳くらいでピアノを始めたとして、音楽大学を卒業するのに17〜18年かかります。
その後、ニューヨークやパリなどの物価の高い都市で数年間暮らしながら有名な音楽大学に通うわけです。
ピアノを習い始めてからの期間は20年、またはそれ以上。
しかも、相当のお金がかかるであろうことは間違いありません。
残念ながらアルバイトなどでどうこうできる金額ではなく、ご家庭の強力なサポートが必要と思います。
ココがポイント
ピアノ上級者を教えるために必要な期間は20年以上。王道パターンも存在するが巨費がかかる
海外留学をせずにピアノ上級者を数多く教えるには?
海外留学などしなくても、コンクールに数多く生徒を出場させることでピアノ講師としての地位をあげていく先生は多いです。
あえて「ピアノコンクールに特化した教室」を打ち出し、上位入賞などの実績を積むことでさらに熱心な生徒を呼び込む戦略。
「あの先生のお教室に入ればコンクールで入賞できる」という、一種の「ブランド」を作っていくわけです。
入会希望者が増えてくれば、ある程度生徒を選別できるようになります。
やがては「コンクールや音大受験を目指す生徒のみしか入会できない教室」などと他の教室との差別化をはかることが可能になるのではないでしょうか。
ココがポイント
「ピアノコンクールに特化した教室」とのブランド作りにより、上級者を中心に教える教室を運営することが可能
まとめ
- ピアノ上級者とは、音大生、音大受験生、有名ピアノコンクールで上位入賞を目指すような生徒と定義できる
- ピアノ上級者を教える先生に必要なスキルは、自身の演奏力だけでなく、難しい曲の解釈や構成を生徒に伝え、曲を完成に導く指導力
- ピアノ上級者の生徒を教えられるようになるための準備期間は20年以上
- 「ハイレベルピアノ講師」になるための王道パターンは、海外留学・欧米での実績・帰国後の音大への就職など
- 国内コンクールに特化した教室を展開することで、「上級者を多く教える教室の講師」としてのブランド作りは可能
ピアノという楽器を学ぶことは、歩いて高い山に登るようなもの。
どこまで行っても頂上は見えず、途方にくれることもしばしば。
それでも、この楽器と出会い、人に教えられるまでになった私たちは幸せ者です。
後に続く人々の助けになるべく、これからも学び続けようではありませんか。
あなたを先生仲間としてお迎えできる日を楽しみに待っていますよ。