「ピアノ教室」と「ビジネス」。
この2つの言葉が並んでいるのを見ると、ちょっと違和感というか、不思議な感覚を覚える人はいませんか?
実は、私がそうでした。
自宅でピアノを教えることを選んだ私にとって、「ビジネス」という、ちょっと冷たくて堅苦しい言葉は、自分とは関係のない、遠い世界のものでした。
でも、年齢を重ねるにつれて、考え方が変わってきたのです。
自宅であれ、音楽教室勤務であれ、ピアノを教えることを仕事として選んだあなたに、今日は大切なことをお知らせします。
目次
ピアノ教室と利益
「ピアノの先生」という仕事に対して、世間ではある種独特のイメージが流布されている模様です。↓
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ピアノの先生の仕事ってどんなイメージ?
この記事では、「ピアノの先生」という職業が持つイメージについて語って参ります。 ピアノの先生という仕事に対して興味を抱くあなた。 あるいは、ピアノの先生になるという目標に向かって努力を続 ...
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上の記事では、きれいな部屋で座ったまま優雅にピアノを教える「ピアノの先生」の一般的なイメージと、そこから外れる現実の様々な先生のタイプについてお話しました。
実際には、ピアノ演奏は一種の全身運動でありまして、それを教えるピアノ講師の仕事も本来それほど優雅なものではありません。
それでも、世間がピアノの先生に対して描く、どこか浮世離れしたイメージは簡単に払拭されないのが実情。
ピアノの先生って家事とか一切しないイメージ。
ピアノの先生は、世知辛い世間一般のことなんて何も知らないでしょ。
ピアノの先生は芸術家なんだから、お金儲けとか考えない方がいいでしょう。
これらは、私がここ40年の間に実際に言われた言葉です。
それにしても不思議です。
なぜ「音楽という芸術に携わるピアノの先生は世知辛くお金儲けなんて考えちゃダメ」なのでしょうか。
人は働いて、その対価としてお金を受け取ります。
ごく普通の経済活動ですね。
例えば、学校や塾の先生が数学や英語を教えれば、当然収入が発生します。
誰も「数学の先生はお金儲けなんて考えちゃダメ」などとは言いません。
ピアノの先生だって同じです。
音楽という芸術を人に伝えることと、収入を得ることは決して対立するものではありません。
ココがポイント
ピアノを教えて収入を得ることに対して罪悪感やためらいを持つ必要はない
教室経営を考えるピアノの先生の悩み
ピアノの先生に向けられる視線
「自宅でピアノを教える仕事をしている」と人に言うと、なぜかとても羨ましがられることがあります。
それだけならよいのですが、時々見当違いの言葉をかけられることが。
「座ってしゃべっているだけでお金が入って来るのはラクでいいですね」というのは何回か言われました。
さらに、若い頃には「ピアノのように実生活の役に立たないものを教えてお金とるなんてチャッカリしてるね」などと言われてびっくりしたことが。
このような無遠慮な人がしょっちゅういるわけではありませんが、世間にはピアノの先生に対してこんな厳しい目を向ける人がいるのも事実。
そして、こういった人々からの有形無形の圧力は、多くのピアノの先生に「労働の対価を受け取ること」に対して臆病にさせます。
悩むピアノの先生たち
「Yahoo知恵袋」などを見ていると、多くのピアノの先生が「月謝」や「レッスン料」について悩んでいるのがわかります。
月謝を滞納している生徒になかなか催促できずにいます
月謝の値上げをどうしても言い出せません
保護者に『月謝が高い』と言われました
近所に月謝のお安い教室ができて、値下げすべきか悩んでいます
などなど。
ピアノの技術は目に見えませんので、一部の生徒や保護者の中には「月謝は安い方がトク」と考える人がいるのは事実。
ですが、もしも先生側が「月謝が安すぎて値上げしたい」と思っているなら、それは適正な金額ではないということです。
無理に抑えた金額のままガマンを続けるのは建設的とはいえません。
ココがポイント
ピアノ講師が働いて利益を得るのはごく普通の経済活動
ピアノ教室経営はビジネス
日本のような資本主義の国では、全てのモノやサービスに適正な価格というものがあります。
「ピアノを教える」という仕事は、誰にでも簡単にできるというわけではありません。↓
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そんな仕事をする上で、不必要にサービスの対価を低く設定することは、自分だけでなく地域のピアノの先生方の価値までも下げてしまう恐れがあるのです。
ココがポイント
仕事をするにあたりピアノ講師もビジネスとして適正な利益を追求してよい
ピアノ教室経営者が「ビジネスの視点」を持つために
ビジネスとしてピアノ教室を経営するなら、利益の出るピアノの月謝の金額を設定する必要があります。
以下の3点に留意してみましょう。
- 今までにかかった費用はいくらか
- 必要経費の算定
- 以上をふまえた上での月謝・レッスン料の設定
今までにかかった費用を算出してみる
まずは、今までにかかったすべての費用を計算してみましょう。
あなたがピアノを人に教えられるようになるまでには、長い時間とたくさんのお金がかかっているはずです。↓
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一例ですが、こんなリストが作れそうです。
- ピアノ2台分(アップライトとグランド)の費用
- 月謝×12×年数
- 楽譜代
- ピアノ調律・メンテナンス費用
- 音楽高校・大学の受験にかかる費用
- 音楽高校・大学の学費
- その他コンサート、講習費用など
人によって、また年代によって大きく環境や状況が違うので一概に言えませんが、とても大きな金額のお金がかかっているはずです。
ピアノ教室経営は、一度に何百万円もの売り上げが見込めるような事業ではありません。
大切なことは、生涯で収支を合わせるためには「長くこの仕事を続ける必要がある」ということ。
諦めずに努力を続けましょう。
仕事をする上での必要経費を算出する
あなたが今現在ピアノ講師として仕事をする上でどのような経費がかかっているかを計算します。
- ピアノ調律・メンテナンス費用
- 教室の備品購入費用
- 生徒用の教本購入費用
- セミナー・講習受講費用
- ピアノ講師サークル会費
- 教室の光熱費など
もしかすると今は実家などに住んでいて、必要経費などは考えていないかもしれません。
それでも少しずつ心の準備を始めておきましょう。
以上の金額から考えて適正な月謝・レッスン料の金額を割り出す
ピアノ講師になった経緯は人によって様々です。
4年制の音大を卒業した後も海外でピアノの勉強を続けた人から、正規の音楽教育を受けずにピアノの先生になる人もいます。↓
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ココがポイント
ピアノ教室経営で利益を出すには、自分の経歴・現在の必要経費から適正な月謝の金額を算定する
まとめ
- ピアノを教えて収入を得ることにためらいや罪悪感を持つ必要はない
- ピアノ講師が働いて利益を得るのは当然の経済活動
- 他人の目を気にして低い月謝でピアノを教えることは望ましくない影響が出ることがある
- ピアノ教室経営はボランティアでなくビジネス
- 利益の出るピアノ教室を経営するためにはビジネスの視点を持つことが重要
「ピアノの先生もビジネスの視点を持て」というのは、私が音大を卒業する前に実際に父から言われた言葉です。
もっとこなれない日本語で言われたので、当時の私はさっぱり意味がわかりませんでした。
今、自分が当時の父の年齢になって、ようやく彼の意図したことがわかってきた気がします。
父はもういませんが、その言葉はなんとなく私の中に残っていて、今回の記事につながりました。
読んでくださった若いあなたに、この記事がひとつの指標となることを願っています。