音大を卒業したらピアノ講師としてバリバリ働きたいと思っているあなた。
どうしたら生徒がたくさん集まるか、色々な方法を考えていることでしょう。
でも、その前に。
決めておかなければならない大切なことがあるんです。
目次
ピアノ教室経営のための理念を策定する
「理念」とは何か。
また、ピアノ教室の「教室理念」とはどのようなものかということについては、以下の記事に詳しいです。↓
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ピアノ教室運営を成功に導く「コンセプト(教室理念)」構築のすすめ
私が最初のピアノの生徒を教え始めてから40年近くが経ちました。 多くの仕事と同じように、この間実に色々なことありました。 悩んだり傷付いたり、もうこの仕事を辞めて教室を閉じてしまおうかと思ったり。 & ...
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上の記事では、ピアノを指導する上で自身の「軸」を持つことにより、ピアノ教室の運営に3つの利点があるというお話をしました。
- 自分の強みを意識できる
- 理念に共鳴する生徒を集められる
- 生徒の都合に振り回されることが少なくなる
また、一案として私のピアノ教室の教室理念をお知らせしました。
福耳音楽教室の教室理念
- 生徒を人として尊重すること
- 生徒一人ひとりの成長に寄り添うこと
- 自力で楽譜を読み、自力で音楽を形作る力を育てること
- ピアノがその人の生涯の友となるよう導くこと
これらはあくまでも一つの例でありまして、あなたのピアノ教室の「理念」「軸」はあなたが決めてよいのです。
あなたは、どのようなピアノ教室を運営したいのでしょうか?
「すべての人がもっている音楽性を育み、自ら音楽をつくり、演奏し、楽しむことの出来る能力を育て、その音楽の歓びを広くわかちあう」これがヤマハ音楽教室の理念です。
(ヤマハ音楽教室ホームページより)
カワイは音楽を通じて、一人ひとりかけがえのない個性(personality)を導きだします。
そして、おたがいの個性を尊重しあう中から、他人(ひと)と心を通わせ心を共振(harmony)させる喜びを創りだします。(カワイ音楽教室ホームページより)
ココがポイント
生徒が集まるピアノ教室を運営するためには「教室理念」を策定することが重要
ピアノ講師としての指導方針を決定しておく
ピアノ教室を運営していく上で、自分の指導方針を決めておくのはとても大切なことです。
ここが定まっていないと、生徒によって対応がブレたり、一部の生徒(保護者)の過大な要求に振り回されたりして先生自身が疲れてしまうことがあります。
「過大な要求」とは、例えば以下のような事例が考えられます。
- 「ウチの子はプライドが高いので、あまり間違いを指摘しないようにして下さい」
- 「塾で忙しいので、練習をしろなどと言わないで下さい」
- 「譜面など読めなくて構いません。弾き方だけ教えて下さい」
- 「知らない曲は弾きたくありません。みんなが知っている曲だけ教えて下さい」
‥などのような要求が、特に保護者から出されることがあります。
中には無理な要求もあり、こうした声にひとつひとつ対応しようとすると、指導のやり方がブレて、きちんとしたレッスンができなくなります。
上のような要求が保護者から出たとき、講師の指導方針がかたまっていれば毅然と対応することができます。
例えば、私の教室では「自力で譜面が読めるようにすること」を教室理念のひとつとしています。
なので、「譜読みの練習なんかしたくありません」という方には、「それは当教室の指導方針と違います」と言ってお断りすることができるわけです。
ピアノ教室を選ぶ権利は生徒側にあります。
なので、講師の対応に納得がいかなければ辞めてしまうかもしれません。
でも、その原因が例えば「譜面を読みたくないから」ということであれば、私は仕方のないことだと考えます。
きっとその生徒は、「譜読みの練習をせず弾き方だけ教える」ような、ご自分の要求の通る別の教室を探すことになるでしょう。
それでよいではありませんか。
ココがポイント
自分の指導方針を決定することで、教室理念の実現につなげる
ピアノ教室経営に向けて自分の強みを意識する
教室理念や指導方針を決定することは、ピアノ講師としての自身の強みを意識することでもあります。
でも「自分のピアノ講師としての強みは何か?」などと考えると、突然自信がなくなる人も多いことでしょう。
例えば、「ピアノ講師の強み」「ピアノ教室の強み」として、以下のような例が考えられます。
- 有名音大卒などの学歴
- 海外留学経験
- 高い演奏技術
- 生徒をコンクールなどに入賞させることのできる指導力
- 幼稚園や小学校が近いなどの立地条件
- 広いレッスン室・外国製のピアノなどの付加価値
- 社交性・宣伝力
- 特に親しみやすい人柄
- 低価格な月謝
まだまだ他にもありそうですがこの辺で。
これらの中から、自分の強みとなりそうな項目を探してみましょう。
有名音大卒などの学歴
クラシックピアノを習わせようと考える保護者にとって、〇〇音大卒などの学歴は教室選びの重要な要素。
日本の音楽大学のレベルはそこそこ高く、充分に強みとなり得ます。↓
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ピアノの先生になるための近道は音大を目指すこと!何を勉強するの?入試レベルは?
ピアノがとても上手な10代の子どもたちが増えてきました。 関連記事 ピアノの先生になるにはどうすれば良いでしょうか ピアノ初心者を対象に教える時の演奏力はどれくらい?他に必要なスキルは?
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海外留学経験
高い演奏技術
音大卒業生の中でさらに差別化をはかろうとするならこれらの要素。
音楽で留学するのは巨費がかかります。
特に欧米での留学経験はそれだけでステータスです。↓
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ピアノ上級者対象の先生になるには?ハイレベルなピアノ指導をするために必要なこと
私は音大を卒業したら、コンクールに生徒を出したり、音大受験のサポートをするようなハイレベルのピアノ教室を運営したい。どんな準備をしておくべき? 福耳おおやる気満々ですね。頼もしい。 一般的なピアノ教室 ...
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生徒をコンクールなどに入賞させることのできる指導力
子どものピアノコンクール 需要は非常に活発で、日本全国で無数と言ってよいほどのピアノコンクール が開かれています。
中で、上位と位置づけされるコンクールにおいて優秀な成績を収める生徒たちを多く送り出す先生方には注目が集まります。
こうなれば、特に宣伝などしなくても生徒が遠くから集まってくることも十分考えられます。
幼稚園や小学校が近いなどの立地条件
ピアノ教室運営の大きなアドバンテージは、なんといっても教室の立地条件。
他に大規模マンションの近くだとか、駅から近い、駐車スペースがある、なども有利な条件になり得るでしょう。
広いレッスン室・外国製のピアノなどの付加価値
仮に、教室の立地が駅から遠いからといって悲観することはありません。
不便さを逆手にとって、広い教室の豪華な設備で生徒を呼び込む手もあります。
素敵なインテリアの室内に、スタインウェイやベヒシュタインなどの外国製のグランドピアノが置かれたていたり。
そんな写真をホームページに載せれば、それだけでアピール材料になるというものです。
社交性・宣伝力
特に親しみやすい人柄
コミュニケーションスキルの高さは、ピアノ講師としての大きな武器です。↓
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ピアノの先生に向いている人・いない人|必要な資質と「良い先生」の条件
ネットの相談サイト見てたら、「ピアノの先生って性格悪い」「キツい」みたいな意見が多くてびっくり。 自分の生徒にそんな風に思われたらイヤだなあ。 福耳私もよく見かけますよ〜。あなたが将来そうならないため ...
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口コミは集客の最強の武器。
持ち前の社交性を活かして人脈を駆使し、生徒募集につなげるのは最も確実で手堅いやり方と言えます。
また、小さい子どもにとって「こわくないピアノの先生」は最重要なポイント。
常にフレンドリーさを前面に出すのはアリです。
低価格な月謝
「どこよりも安い」というのは、やはりアピールポイントになります。
「低価格なピアノ教室」をかかげて、とにかくもその辺りの地域市場のシェアを自分のモノにしてしまう戦略。
一定の需要があると思われる地域もあり、アグレッシブな先生なら試してみる価値はあるかも。
ココがポイント
自分の強みを意識すると、教室理念や指導方針を決めるときの根拠になる
ピアノ教室経営のための「教室理念」と「指導方針」の決め方
自分の強みが意識できたら、いよいよ理念と指導方針を決めていきます。
例えば、あなたの「強み」が「4年制の有名な音楽大学ピアノ科を卒業したこと」だとします。
チラシやホームページには当然そのことを書きますよね。
すると、「しっかりとした指導をするピアノ教室」を探す生徒たちがアクセスしてきます。
それなのに、教室理念が「楽しさを追求する教室」で、指導方針が「みんなが知ってる曲をどんどん弾けるようになっちゃいましょう!」だったらどうでしょう?
あれれ?なんか違うぞ?となるのは避けられません。
逆に、「フレンドリーで楽しい教室」をうたいながら教室のピアノが高価な外国製で、しょっちゅう先生がピアノのことを気にして「汚い手で触らないでね〜」なんて言うのも興ざめですよね。
ココがポイント
ピアノ講師としての「強み」と「教室理念」、「指導方針」にズレがないようにする
まとめ
- 生徒が集まるピアノ教室を運営するには、「教室理念」を策定しておくことが重要
- ピアノ教室の「理念」を実現するためには、自分の「指導方針」を決定しておく必要あり
- ピアノ講師としての自身の「強み」を意識すると、教室理念と指導方針が決めやすい
- ピアノ講師としての強みと、「教室理念」「指導方針」にズレがないようにする
私は、40年のピアノ講師歴のうち、最初のうちは理念どころか指導方針も定まらないまま教えていました。
若かったせいもあり、生徒たちの様々な要求にはずいぶん振り回されたものです。
それでも長くこの仕事を続けるうちに、だんだんと生徒との間合いを決定するコツのようなものがつかめるようになってきました。
生徒と良い関係を築き、ピアノ教室の運営を安定させるためには、自身の「ブレない軸」を持つことが何より大切だと気づいたのです。
まだ若くて経験の浅いピアノの先生であるあなたにとって、今回の記事はちょっと抽象的だったかもしれません。
でも、この仕事を続けていくと、これから色々と判断の難しい問題や悩ましい事例が出てくることと思います。
そんな時、自身のブレない軸を持つという「教室理念」と「指導方針」を説明した今回の記事が、少しでもお役に立てることを願っています。
健闘を祈ります!