楽器店の店頭では、実に多くのピアノ初心者向け楽譜が並んでいます。
特に、幼稚園年中組となる4〜5歳の幼児用の導入期の教材・教本は花盛り。
ただでさえ種類が多いのに、毎年のように新しい導入教本が発売され、果たしてどれを選んでよいか悩む人は多いのではないでしょうか。
この記事では、どうやって自分の生徒に合った教材を選べばよいか、その指針をお伝えして参ります。
膨大な導入教材を前に悩むあなたの助けになれば幸いです。
目次
幼稚園年中児(4〜5歳)の最初のピアノ教本選び
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面談の首尾よくその場でピアノ教室への入会が決まったら、次は教本選びです。
私は面談時に保護者に以下の3点を伺って決めています。
保護者からの聞き取り項目
- 本人の音楽への興味の現れ方
- 文字・数字への興味と読み書き
- 好きな本のタイプ
音楽への興味の現れ方
ピアノを習う子どもの多くは、幼い頃からはっきりと音楽への興味を示しています。
保護者はその気持ちを汲み取り、子どもを連れてピアノ教室の門を叩くわけです。
そして、その気持ちは本人の気質によって幾つかのタイプに分かれ、例えば以下のようなサインとなって現れます。
- 音楽が聞こえるとじっと聴き入る
- テレビの音楽などに合わせて歌ったり踊ったりする
- アニメの主題歌などをいち早く覚える
- あちこちの鍵盤楽器に興味を示す
これらの行動サインによって、ある程度本人の気質を知ることができます。
踊り出すのは活発なタイプ、あちこちの鍵盤楽器に触りたい子は自ら音を出したいのかな、などのように推測できます。
文字・数字への興味と読み書き
文字や数字への興味の有無は、本人の気質を判断するときの重要なファクター。
幼児の発達には大きな個人差があり、読み書きの早い・遅いは本人の優劣とは関係がありません。
ただ、生徒の能力がどの部分から先に発達していくかというのは、ピアノ指導者としてはぜひ知りたいところ。
人は、自分の得意な能力を使って物事を習得していくものだからです。
好きな本のタイプ
ほとんどの子どもは本が好きですが、どんな本が好きかというのはその子の気質と関係がありそうです。
読み聞かせであれ、自分で読むのであれ、たとえ見るだけであっても、子どもは自分の興味のあるタイプの本が大好きです。
そこから子どもの気質を判断できます。
大切なことは、その子の興味のある分野から指導しやすい教材を選ぶこと。
あくまで参考程度ではありますが、意外に役立つ情報です。
ココがポイント
幼児用導入教本選びは面談での聞き取りを参考に。・本人の音楽への興味の現れ方・文字の読み書き・好きな本のタイプから決定する。
ピアノを学ぶ子どものタイプを探る
ざっくりですが、以下の4タイプくらいに分けます。
- 耳から情報を入手するタイプ
- 文字から情報を入手するタイプ
- 「仕組み」「成り立ち」に興味を示すタイプ
- まだ幼く、幼児らしいタイプ
もちろん、2つ以上のタイプが混じっていたり、どれにも当てはまらない子もいますので絶対的なものではありません。
が、膨大な幼児用導入教本の中からたったひとつを選ぶ時の手がかりにはなるはず。
あくまでも一つの参考になり得るということです。
タイプ別最適ピアノ教材紹介
以上のタイプにそれぞれ合った代表的な教本は以下の通りです。
耳から情報を入手するタイプ
音楽之友社:うたとピアノの絵本
著者:呉暁
耳と記憶力がよく、お話の読み聞かせが大好き。
聞いた歌をすぐに覚えて歌うことができ、テレビの音声と一緒に歌いながら楽しそうに踊ったりするタイプ。
こんなお子さんにはこの教本をおすすめします。
「みぎて」は、その題名の通り右手だけのために書かれた楽譜。
親指(①の指)を中央ドの音に置き、小指⑤がソの音を超えることのない、いわゆる「指ひろげ」のないつくりになっています。
全ての曲に音の高さに合った歌詞がつけられ、歌って覚えるのに適した楽譜。
挿し絵もほのぼのとして可愛らしく、保護者の人気も絶大。
導入期の幼児に安心しておすすめできる教材です。
姉妹編に「ひだりて」「りょうて」があります。
文字から情報を入手するタイプ
Gakken:ぴあの どりーむ [幼児版]
著者:田丸信明 編
文字や数字に興味がある子どもは比較的早くに読めるようになり、絵本も自分で読もうとします。
耳から情報を入手するより、文字や記号など目で見た情報を取り入れるのが好きなタイプ。
こんなタイプの子どもにおすすめしたいのは、この「ぴあのどりーむ」のシリーズです。
いわゆる「ミドルC」と呼ばれる、中央ドの音を中心に左右に音域を広げながら音の名前と場所を一致させていく教材。
最初しばらくは、左右の手で「ド」の音だけを練習することになります。
読譜力を養うには効果的ですが、音の響きが地味なので「視覚有意」なタイプの子でないと退屈に感じることがあります。
幼児版が終わると、美しい挿し絵で人気の「初級ピアノテキスト ぴあのどりーむ」に進みます。
「仕組み」「成り立ち」に興味を示すタイプ
東音企画:バスティン ピアノパーティー
著者:J.バスティン L.バスティン共著
「バスティン・メソード」と呼ばれる、体系的なアメリカの教材です。
導入用としては、比較的低年齢から使える「パーティー」シリーズがおすすめです。
どちらも単にピアノを弾くだけでなく、聴音や楽典(セオリー・音楽理論の初歩)の学習に重きを置いていて、総合的に音楽を学べるように編集されています。
「ドレミファソラシド」をアメリカ式に英語で「C D E F G A B C」 と覚えるのも特徴。
日本語版は、全曲に英語と日本語両方の歌詞がつけられ、どちらの言葉でも歌えるように配慮。
ピアノの他にに英会話を学んでいる子や、音価(音符の長さ)や音程(音と音の距離)などのセオリーに抵抗のない子どもにおすすめしたい教材です。
まだ幼く幼児らしいタイプ
音楽之友社:プレ・ピアノランド
著者:樹原涼子
ピアノに向かう前に、身体を使って弾くための準備をする教材です。
先生のピアノ伴奏に合わせて、様々な身体活動をすることで徐々にピアノを弾くための身体の準備を整えていきます。
まずは「いしになったつもりで」力を入れて跳んだあと、「にんじゃみたいに」体の力を抜いて跳ぶことで「緊張と弛緩」を体感するところから。
先生の声かけに反応して素早く身体の各部位を触らせるゲームや、左右の腕や足の関節を曲げたり伸ばしたりすることによって幼児が自分の意思で体をコントロールすることを覚えさせます。
そして、だんだんと手の動きから指遊びへと身体の末端部分を動かせるように導いていきます。
ピアノを弾く前の準備段階用の導入教材として大役立ち。
特に体を動かすのが好きな子どもに向いています。
ココがポイント
導入期の幼児へのピアノ指導には、本人の情報のとらえ方や文字への興味、音楽理論への抵抗感の有無などから推察した最適な教本を判断・使用する
まとめ
- 導入期の幼児のピアノ教本選びは、保護者との面談により本人のタイプを推測することから始める
- 本人の情報のとらえ方や興味関心などから4つのタイプに仮認定
- それぞれのタイプに合った教本・教材を使用することで導入期を乗り切る
私は40年もピアノを教えてきましたが、初心者の幼児を教えるのが一番難しいといつも感じています。
彼らは日々成長し、変化しているので、先週と今週とでは別人のようになっていたり、またもとに戻ったりと言うことがしょっちゅう起こります。
そんな彼らの興味を、ピアノという習得の難しい楽器につなぎとめるのは容易ではありません。
長年苦心して得た結論は、本人の音楽との関わり方や文字への興味、関心事項から最適教材を推測するという手法が、現時点ではベストであるということ。
ピアノ指導のやり方に正解はなく、講師と生徒の組み合わせによっても状況は変わります。
新しい教材と情報の洪水の中で、さらなる研究を続けていくのが私たちの責務だと言えそうです。
若いあなたのこれからの活躍に期待しています。
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