自分の生徒にそんな風に思われたらイヤだなあ。
「ヤフー知恵袋」「教えてgoo」などの相談サイトでは、「ピアノの先生にこんなキツいことを言われました」「ピアノの先生って性格悪い人が多いのでは」といった投稿が目につきます。
現役ピアノ講師としては見過ごすわけにはいきません。
なぜ生徒から「キツい」「性格悪い」などと思われてしまうのか、どうすれば「良い先生」として慕われる存在になれるのか考えてみました。
目次
ピアノの先生は性格が悪い!?
実際に「ヤフー知恵袋」にて「ピアノの先生が怖い」「厳しすぎる」などの意見を拾ってみました。
(やや文言を変えてあります)
- 「ピアノの先生が怖いのですが‥暗譜ができていないと厳しく叱られます」
- 「私のピアノの先生はけっこう怒鳴っていました。『だから違うでしょー!!』みたいな」
- 「ピアノの先生に『こんなに弾けない子は初めて。才能ないのね』と言われました」
- 「間違えるとピアノの先生にイスをけとばされました」
- 「ミスをするたびに『違う!ヘタ!』と怒鳴られ、ペンが飛んでくることもありました」
‥といった具合。
なかなか壮絶です。
相談者の方々のお悩みに共通するのは、「こちら(生徒側)にも練習不足などの落ち度はあるものの、これほど先生に激怒される理由がわからない」という戸惑いです。
厳しい練習を積んでピアノ講師になった先生方にとって、生徒が練習不足のままピアノのレッスンに来るのはガマンならないのかもしれません。
でも、多くの生徒にとってはピアノはあくまで趣味の一部。
「そこまで怒らなくても」などと感じるのも当然です。
もう少し穏やかにレッスンして下されば悩む生徒さんも減ると思うのですが。
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ピアノの先生に必要な資質とは?
気持ちが安定していること
ピアノに限らず、指導者に最も必要な資質は「精神の安定」です。
人に物事を教えて上達に導くには、講師の言動が一貫していることが何よりも大切。
先生の気持ちが日によって不安定に揺れ動いたり、言っていることがその都度変わったりすると生徒は混乱します。
さらに、ピアノの先生は年齢の様々な子ども達を生徒とすることが多いので、先生自身が不安定だと生徒にそのまま伝わってしまいます。
先生自身に悪気はなくても、気持ちのたかぶりによる不用意な一言で生徒がピアノ嫌いになったりしたら目も当てられません。
もともと幼い子どもとは不安定な存在。
他の習い事の先生などよりも冷静さや平常心が求められます。
ピアノに限らず教えることが好き
教えることが好きかどうか。
これも、ピアノに限らず教師・講師の大切な資質のひとつです。
教え好きかどうかは、街を歩いていて人に道を聞かれたとき、相手にどんな態度をとるかである程度わかります。
普通は、「知っている場所やわかっている行き方なら教えられるけど、知らない場所については『ごめんなさいわかりません』と告げる」人が大多数でしょう。
「教えるのが好きな人」は、この場面で一緒になって考えてしまいます。
相手が地図など持っていればのぞき込み、上下ひっくり返して何か教えられることはないかと必死に考えます。
時間があれば目印に向かって一緒に歩き出してみたり。
自分が遅刻しそうになったこともあります(笑)。
「教えるのが好き」という気質は、人に物事を伝えたいという気持ちが強い人に共通のものです。
教えることは伝えること。
もしもあなたがこんなタイプなら、先生という仕事におおいに向いているといえるでしょう。
他人の成長を心から願い、喜ぶこと
ピアノの先生としての最も大切な資質は、他人の(子どもの)成長を心から喜ぶことができるかどうかです。
自分の身内ではない、血のつながりなどのない、いわば「他人」である生徒たち。
彼らに自分の持っている様々な知識や技術を惜しみなく分け与えることができて、自身を表現するためのお手伝いを喜んでできること。
自分を表現するよりも、生徒が自身を表現することができるように気を配れること。
これらはある程度持って生まれた資質ですが、努力によってコントロールできるようになっていきます。
ピアノが弾けるようになるためには数年単位の時間が必要。
その間ずっと、自分ではなく、人を成長させることの喜びを味わえる人こそ、この仕事に向いているといえるでしょう。
ピアノの先生に必要な資質
- 精神の安定
- 教えることが好き
- 他人の成長を心から喜ぶ気質
良いピアノの先生の条件・まずはコミュニケーションスキル
コミュニケーション・スキル
「良いピアノの先生」の条件第一は、なんといってもコミュニケーションスキルがあることです。
記事の冒頭で、怒りまくるコワいピアノの先生方のお話をしました。
私は、このような残念な気持ちの行き違いは、先生側のコミュニケーションが足りないことが原因ではないかと考えています。
先生は「レッスンに来るからには練習ができていて当然」と考え、練習不足の生徒に声を荒げるケースが多いようですが、そもそも怒る前にすべきことがあります。
それは、「なぜその生徒は練習が不足しているのか?」を探ること。
単に忙しいのか、ピアノがあまり好きでなくなったのか、ピアノよりもっと興味を引かれるものができたのか。
その理由によってはレッスンそのもののやり方を変える必要があるかもしれず、また場合によっては保護者の方と連携する必要があるかもしれません。
怒るよりも、本人や保護者と密にコミュニケーションを取った方が良い結果が得られるでしょう。
「じぶんファースト」よりも「生徒ファースト」
他の先生方のピアノの発表会を見学させて頂くと、たまに首をかしげたくなる先生がいらっしゃいます。
先生がドレスで華やかに着飾るのはよいのですが、プログラムが進むにつれ衣装が「お色直し」のごとく、髪型やアクセサリーとともに数回にわたり変化。
あれほど何回も着替えをされながら生徒さんの演奏に集中できるものでしょうか‥。
また、生徒さんとの連弾で先生が「高音部」、つまり客席側に座って演奏される方もいました。
小さな子どもの生徒さんの場合、客席の保護者からは完全に先生の姿しか見えなくなります。
連弾の場合、高音部は「プリモ(primo)」といってその曲の主旋律を担当し、低音部は「セコンド(secondo)」つまり伴奏をつとめることが多いです。
連弾で先生がプリモを弾くということは、生徒さんにご自分の演奏の伴奏をさせていたことになります。
よくクレームが出ないものだと心配になったほどでした。
発表会はピアノの先生のカラーが強く出ます。
相談サイトでも、「ピアノの発表会って先生のためのものですか?」などというトピックが立っていました。
ピアノの発表会は、あくまでも「生徒ファースト」として運営し、先生は「縁の下の力持ち」に徹した方が印象は良いようです。
忍耐力がある
ピアノは演奏の難しい楽器です。
少々教えたくらいで簡単に弾けるようにはなりません。
何しろ10本の指をバラバラに動かさねばならないのですから。
楽譜の読み方も、普通の楽器より音の数が多いので複雑になります。
色々と覚えることも多く、弾けるようになるまでにとにかく時間がかかるのです。
なので、ピアノの先生には何よりも「忍耐力」が求められます。
生徒が練習しないとき、何度説明してもわからないとき、何回も練習させたのにやっぱり弾けないとき。
決して「まだできないの?」とか「なんでわからないの?」などと言わないようにしましょう。
ましてキレるなどもってのほか。
生徒がうまく弾けないなら、それは私たち教える側の責任だということを忘れないようにしましょう。
ココがポイント
良いピアノの先生の条件は、コミュニケーション・スキル、生徒ファースト、忍耐力
まとめ
- ピアノの先生の怒りに悩むピアノ学習者は多い
- ピアノの先生に必要な資質は精神の安定性・教え好き・他人の成長を喜ぶ気質
- 良いピアノの先生の条件はコミュニケーションスキル・生徒ファースト・忍耐力
私は教えることが好きな方ですが、教わることも大好きです。
良い指導者に巡り合って、自分が今までできなかったことができるようになっていくとき、実に楽しくてワクワクしてしまいます。
ということは、ピアノを学ぼうとする多くの生徒たちも同じ気持ちのはず。
彼らの期待に応えられるように、私自身もまだまだ学び続けようと思っています。