一般的に、ピアノを習い始めるに適当な時期と言われる学齢期の子供たち。
幼稚園までの幼児たちと違って、個性がはっきりして来ますしたくさんの習い事や塾などに通う子もいます。
幼稚園年長児向けピアノ教本の選び方の記事はこちら↓
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幼稚園年長児向けピアノ教本おすすめ6選!初心者から経験者まで最適教材をご紹介
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本記事では、学齢のピアノ初心者と経験者それぞれについて、適当と思われる教本をピックアップ。
さらに、意欲のある子供たちのためにポリフォニー(多声音楽)の基礎を学べる教本も選んでみました。
目次
小学校低学年のピアノ教本選びの考え方
小学生になると、通学が日常生活の中心を占めるように。友達同士で遊んだり習い事の種類が増えたり、あるいは塾に通い始める子も出てくる時期。
子供が小学生になるのを機に働く保護者も増えてくるので、保護者の協力の度合いも生徒により大きく異なってきます。
ピアノへの取り組み方が生徒により大きく違うため、レッスンの進め方も一人ひとり異なってくるのが普通です。
初心者用教本選びの考え方
小学校低学年のピアノ初心者は、入会時の面談で本人の性向と保護者の意向を確認してレッスン方針を決めるのが良いでしょう。
以下の2パターンを考えてみました。
- できるだけ早く進むタイプ
- じっくりマイペースタイプ
何はともあれサクサク進みたい、あるいはコンクール出演などを念頭に、できるだけ早く目標となるレベルに到達したいと考える生徒(の保護者)。
こんな子供たちには、曲数は少なくとも一曲一曲の内容が充実していて、進度が比較的速く進む教本・教材がおすすめ。
マイペース派ならその逆。つまり、曲数が多く、進度のレベルがなだらかなものが合います。
保護者が忙しくレッスンへの協力が得られにくい、または時間をかけてじっくり上達したい、させたいタイプの生徒にはこのやり方がおすすめです。
経験者用教本選びの考え方
引越しその他の事情により入会して来たピアノ経験者の弱点補強、あるいは現在使っている教本・教材が合わないと感じた場合にテキストを変えてみるのは有効。
以下4パターンを考えました。
- 譜読みをきたえる教本
- 問題を解いたり作業しながら学ぶ教本
- 復習のためのやり直し教本
- ポリフォニー(多声音楽)の基本を学ぶ教本
小学生ともなれば、ピアノ経験者にも様々なタイプがいます。
特に譜読みが弱点となっている生徒には、楽譜の編集がゆったりとして見やすい教本がおすすめです。
また、ドリル問題を解いたり聴音に取り組んだりなどの作業が大好きなタイプの生徒には「年長児向け教本」でもお伝えしたシリーズの次のレベルの教材がぴったり。
さらに意欲のある生徒には、将来バッハを演奏するためにポリフォニー(多声音楽)の基本が学べる教材もふさわしいもの。
小学生へのレッスンでは、それぞれの生徒の興味やピアノへの取り組み方、保護者の協力が望めるか否かにより、選ぶ教本も変わってくるというわけです。
ココがポイント
小学生は、ピアノへの興味の度合いや取り組み方により、レッスンの進め方・教本の選び方が変わってくる
小学校低学年の初心者用ピアノ教本おすすめ
早い上達を望むタイプ
- 教本名:新版 みんなのオルガン・ピアノの本1〜4
- 発行:ヤマハミュージックメディア
- 著者:高橋正夫
1957年に誕生した、鍵盤楽器を習う子供のための導入教材のロングセラー。
発行から65年という長い時間を経てなお、多くのピアノの先生たちから高い支持を得る人気教本です。
全4巻を終えると「ブルグミュラー25の練習曲」へと進む事ができるように編集されており、1曲1曲の内容が濃く、充実しているのが特徴です。
内容が盛り沢山なので進度は早く、飲み込みの早い生徒、保護者の協力が望める生徒におすすめ。
完全対応する「みんなのオルガン・ピアノの本 ワークブック」を併用するとさらに効果的です。
「みんなのオルガン・ピアノの本」の弱点
1巻の中頃には早くも左手和音を使った両手奏が出現。
1巻の終わりまでにヘ長調やイ短調、ニ短調、ト長調など様々な調性の曲を両手で弾くことになります。
このように難易度の傾斜がかなり急なため、子供のタイプによっては消化不良を起こすことがあります。
また記憶力の良い子では暗譜して弾くクセがつく恐れが。こうなると読譜力が伸びません。
サブ教材として「ぴあのどリーむ」など曲数の多い別の教本を併用するのがおすすめです。
マイペースタイプ
- 教本名:トンプソン はじめてのピアノ教本1〜3
- 発行:ヤマハミュージックメディア
- 著者:ジョン・トンプソン
- 訳:大島妙子
ジョン・トンプソンの「現代ピアノ教本(全音楽譜出版社)」「トンプソン 小さな手のためのピアノ教本」は、特徴的な赤い表紙で日本でもすでにおなじみ。
本書はその弱点を補強するかのように、日本では2008年に初版が発行されました。
簡単に楽譜の仕組みを説明したのち、全音符の「ミドルCポジション」から音域が増えていく方式の教本です。
曲数が多く、また「ワークシート」により譜読みの力を確認しながら比較的ゆっくり進んでいくのが特徴で、どんな生徒にも安心しておすすめできます。
テクニックを鍛えるための教本「バーナム ピアノテクニック」などと併用すると良いでしょう。
参考
ミドルCポジションとは:
鍵盤中央の「ド」の音に両手の①指を、右手の⑤(小指)が「ソ」、左手⑤がヘ音記号の「ファ」音に置かれるポジション。
中央ドの音を中心に左右に音域を広げていくタイプの教材で用いられます。
「トンプソン「はじめてのピアノ教本」の弱点
イラストのキャラクターたちが、なんともアメリカ的といいますか、日本人の子供の目には正直、あんまり可愛く見えないかも‥しれません(笑)。
また、英語のリズムや韻を踏む面白さを日本語では再現できないとの理由により、ほとんどの曲に歌詞がついておらず(一部英語の歌詞のみ)ちょっぴり残念に思います。
このほか、「年長児向け教材の選び方」でご紹介した「ぴあのどりーむ」シリーズもおすすめです。
小学校低学年の経験者用ピアノ教本おすすめ
読譜力をきたえる教本
- 教本名:アキ ピアノ教本1〜3
- 発行:音楽之友社
- 著者:呉暁
ソルフェージュ指導に定評のある呉暁氏による、「ふよみとテクニックをたのしく」学ぶための教本。
「年長児向けピアノ教本おすすめ6選」でご紹介した「うたとピアノの絵本③りょうて」の次に使うのに最適としています。
特徴はなんといっても曲数の多さ。
「ピアノを好きになって長続きするもとは、自分で譜読みができることです(『まえがき』より)」との著書の信念により、大きな音符での練習曲がこれでもかと続きます。
進度は極めてなだらかで新規学習事項も限られ、のんびりした子にとっても負担の少ない設計になっています。
3巻まで終了すると、バルトークの「ミクロコスモス」I へと進む事ができます。
「アキ ピアノ教本」の弱点
よく知られている童謡や民謡を取り入れているのは良いのですが、3巻の終わりの方になっても「メリーさんのひつじ」や「キラキラ星」なので、プライドの高い子はカチンとくるかもしれませんσ(^_^;)
また、ニ長調などの曲を学習するときも最後まで調号を使わない方針のため、調性の理解を則すような説明が別に必要になります。
作業を通して学ぶ教本
- 教本名:アルフレッド・ピアノライブラリー レベルB
- 発行:全音楽譜出版社
- 著者:パーマー/マニュス/レスコー
- 訳:田村智子
アメリカの子どものために書かれた初心者用の教材。「年長児向き」の記事でご紹介した、レベルAの次レベルのものです。
メインテキスト「レッスンブック」のほかに「併用曲集」、「やさしい楽典」、「聴音と音楽ドリル」の4冊を連動させながらピアノと音楽の仕組みを体系的に学んでいきます。
4冊を同時進行で進めていくので理解が深まりやすく、進度はゆっくりめです。
日本の教材に比べるとやや理論重視。感覚ではなく理屈で音楽を学ぶタイプの子どもに向いています。
「書く」「色を塗る」作業が多めで、手を動かしながら学習するタイプの子供にぴったりです。
「アルフレッド・ピアノライブラリー」の弱点
進度がゆっくりのため、早くに難しい曲を弾けるようになりたい子には向きません。
また、4冊同時に購入することに難色を示す保護者がたまにいます。その場合は「聴音」はカットしても良いでしょう。
復習のためのやり直し教本
- 教本名:こどものバイエル教本3〜5
- 発行:ドレミ楽譜出版社
- 編著者:森本琢郎・池田恭子
小学生の中には、そこそこのピアノ経験者でありながら、読譜力だけでなく基礎・基本がポッカリ抜け落ちているタイプの子供がいます。
楽譜から情報を読み取る事ができず、指番号もめちゃくちゃ、拍の数え方もピアノの正しい音の出し方もわからない。
そんな症状を抱えて駆け込んでくる生徒には、伝統的な「バイエル」がおすすめ。
音の並びが古典的でわかりやすく、譜読みが容易。曲数も多いので復習を兼ねた基礎・基本のやり直し練習に効果を発揮します。
各出版社から出ていますが、5冊に分かれたドレミ出版社のものなら、8分音符の課題の多い3巻以降がおすすめ。
「バイエル」の弱点
長らく欠点を指摘されて久しい「左手もしばらくト音記号の曲ばかりなのでヘ音記号の習得が遅れる」問題。
ヘ音記号の譜読み課題を生徒に別課題として与える必要があります。
ポリフォニー(多声音楽)を学ぶ教本
- Miyoshi ピアノメソード2〜4
- 発行:カワイ出版
- 著者:三善晃
ポリフォニーとは「多声音楽」または「複音楽」と訳されます。
「メロデイと伴奏」ではなく、左右の手が対等に旋律の流れを主張するタイプの楽曲のことを指し、バッハなどのバロック音楽によくみられる形式です。
このポリフォニーの要素を早い時期から取り入れたのがこの「Miyoshi ピアノ・メソード」。
全曲を通して左手と右手を対等に動かす事が意識され、また現代曲らしい斬新な音の響きも新鮮で、難易度はかなり高め。
既存の教本に飽きたらない意欲のある生徒や、コンクールなどでポリフォニーの曲に挑戦することの多いハイレベルな生徒の副教材におすすめです。
「Miyoshi ピアノ・メソード」の弱点
なんといっても難しいことです♪( ´▽`)
パズルを解くような楽しさを感じ取れる子でないと巻を進めていくのは大変かもしれません。
5巻は特に難しいので、2〜4巻を副教材として使い、6巻以降は三善晃の「曲集」として使うのも良いでしょう。
まとめ
- 小学校低学年の生徒は、本人の気質や性向、保護者の意向によりレッスンの進め方のタイプを決定しておくと良い
- 低学年初心者のうち早く進みたい生徒には「オルガン・ピアノの本」がおすすめ
- 低学年初心者のうちじっくり進みたい生徒には「トンプソン はじめてのピアノ教本」、「ぴあのどりーむ」シリーズがおすすめ
- 低学年経験者は、弱点補強や基礎・基本のやり直し、ポリフォニーを学ぶなど目的に合わせて教本を選ぶと良い
小学校低学年児童は、小学生とはいえ保護者の意向や存在感がまだまだ大きく、教本・教材選びも一筋縄ではいかないもの。
入会時の面談だけでなく、こまめに保護者とコミュニケーションを取り、きめ細かく対応していく事が求められます。
難しいけれどやりがいのある小学校低学年の生徒。
本記事が、あなたの教室の教本選びのお役に立てれば幸いです。
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