ピアノ講師という仕事を選んだからには、いずれは生徒の発表の場を設けるべく発表会を開くことになるでしょう。
ピアノ発表会は、生徒にとっても保護者にとっても大きなイベントであり、思わず知らず期待値は高くなるものです。
主宰する講師も一生懸命に企画運営するのですが、なかには行き違いがあったり、双方の考え方の違いにより保護者側に不満が出ることがあります。
本記事では、ピアノ発表会に関する保護者のクレームの中から典型的なものを選び、その対処方法を考えてみました。
目次
ピアノ発表会に関してのクレーム
- 選曲に関するクレーム
- 演奏順序に関するクレーム
- 演奏時間に関するクレーム
- 会費に関するクレーム
以下、典型的なパターンと解決方法をお知らせします!
ピアノ発表会の選曲に関するクレーム
曲の変更要求
年に一度、あるいは数年に一度のピアノ発表会。我が子に舞台上で輝いて欲しいと願わない保護者はいません。
できるだけ音量が多くて聴き映えのする派手な曲を、という要望はごく自然なものです。
指導者としては「発表会を通してこの生徒に学んでほしいこと」や「作曲者の年代」などを鑑みて演奏曲を決めるものですが、発表会での選曲は極めてデリケートな問題。
後々までの不満につながりかねないため、ここは講師側が折れるのが適当でしょう。
生徒本人も曲の変更を望んでいるなら、発表会全体のバランスが崩れない範囲で変えてあげた方が良いパフォーマンスにつながります。
なお、演奏曲の途中変更はやはり大変なので、曲決めの際には候補を数曲選んでおき、保護者に立ち会って頂いた上で生徒に選ばせるのが一番です。
よくしたもので、昨今は練習しない生徒にも弾ける、それなりに聴き映えのするピアノ曲も出てきています。そうした曲を探し出すのも講師の腕の見せ所。
「練習はしたくないけどショパンが弾きたい」のような無茶ぶりに対しては、「練習なしにショパンは弾けない」ことをよく説明しましょう。
希望曲の重複
- ジャンケン・くじ引きなど
- 講師の判断でどちらかに決める
くじ引きなど
どちらとも判断がつかない場合、ジャンケンやくじ引きで決めるのが分かりやすく手っ取り早いやり方。
私はこの方式を取り入れたことはありませんが、「曲が重なった時はジャンケンなどさせて決めている」という先生はそこそこいます。
結果が出た暁には「お互い恨みっこなし」と決めておく必要がありそうです。
講師の判断
講師が総合的に判断して、どちらが弾くかを決めるのが本来望ましいパターン。
どちらかの生徒が前回も似たようなタイプの曲なら、今回は別の生徒に弾かせるのが良いと思います。
「エリーゼだと前回と似た感じの曲なので‥」と説明すれば、保護者にも納得して頂きやすいでしょう。
ある程度進むと、生徒の演奏タイプにもロマン派向き、古典派向き、近・現代の曲向きなど個性が出てきます。
「エリーゼのために」はベートーヴェンの作品ですが、ロマン派の様式で書かれています。
あるいは日頃の練習状況などを鑑みて総合的に判断し、外れた方にはフォローをしっかりしていくのが良いでしょう。
ココがポイント
生徒が曲の変更を望む場合には、本人の希望を受け入れ変更。希望曲が重なったら講師が総合的に判断し、外れた生徒にはしっかりフォローをするのがおすすめ。
ピアノ発表会での演奏順序に関するクレーム
同じ学年の生徒が何人かいた場合、演奏順序をどのように決めるかはなかなか難しい問題。
とかく、「順番が後ろの生徒の方が上手なのではないか」と思われることが多いためです。
保護者によっては「ウチの子が一番最初なのは納得いかない」「なぜあの子の方が後ろなのか」という思いにとらわれることが。
この手のクレームを避けるなら、「順番が後ろの生徒のレベルが高い」という状況を作らないのがおすすめ。
苗字のあいうえお順や曲の時間的な長さ、あるいは単に誕生月が早い順など、進度順と思わせないプログラム作りが求められます。
発表会のプログラム全体で作曲家の年代順にすると、会の終わりの方に近・現代曲が並び、一般のお客さんは飽きてしまいます。
が、同学年間だけなら大丈夫。バラエティに富んだプログラムを演出することができます。
もちろん、講師には様々な年代の曲をリサーチする努力が欠かせませんが、ご自身の「引き出し」を豊かにする意味でもトライする価値は大いにあります。
要は、演奏順序に関しては講師の信条により自由に決めて良いということ。
クレームを恐れず実力順にするのも良し、あるいは生徒に配慮して進度順の色合いを薄めるのも講師の判断次第というわけです。
ココがポイント
演奏順序のクレームを避けるなら作曲家の年代順や教室への入会順に並べる。クレームを恐れず、あえて曲の難易度が易しいものから並べ、生徒間の競争を促すやり方もあり。
ピアノ発表会での演奏時間に関するクレーム
選曲、演奏順序ときて、次に多いのは演奏時間に関するクレーム。
会費は同じなのに、初心者は演奏時間1〜2分程度、かたや一人で15分近く弾く生徒がいるのは納得できないというのが多いパターン。
確かにもっともな話であり、最近では時間制限を設ける教室が増えてきているようです。
ただし、初心者と10年選手が同じ演奏時間というのも現実的ではありません。
一人5分程度、最長でも7〜8分以内に弾き終わるようなプログラムにしておけば抵抗感が少ないようです。
演奏時間5分というのは、聴く方はそこそこ長く感じられるもの。
年齢の低い生徒の多いピアノ発表会では、一人の演奏時間としてちょうど良いくらいの長さです。
ココがポイント
演奏時間に関するクレームを防ぐには一人当たりの演奏時間の上限を決めておき、そこからはみ出ないようにするのが適当。最長でも7〜8分程度に。
ピアノ発表会の会費に関するクレーム
経費に対する無理解
ピアノ発表会の会費(参加費用)は、条件により異なりますが、首都圏なら10000〜13000円程度が相場というのが経験上の実感です。
多くの場合、この金額には会場やピアノの使用料のほか、ステージに飾るお花、プログラム、記念品の費用などが含まれます。
発表会を開催する講師としては、これらの経費を念頭に一人当たりの参加費用を決め、保護者から徴収することになります。
ところが、なかにはこうした経費がかかることを知らず、「月謝の他に費用がかかるとは聞いていない!」というクレームを発する保護者がいます。
月謝とは、あくまでもピアノという楽器を学ぶための費用。発表会とはその成果を人前で披露する機会であり、月謝とは別に諸経費がかかる。
この点をしっかりご説明して理解していただくのが一番です。
そして、発表会が終わったらしっかりとした会計報告書を出しましょう。
参加費用の明細要求
発表会の会計報告については、様々な考え方があることでしょう。
私は、雑費まできちんと計上した会計報告書をいつも保護者に配布しています。
通信費・交通費としてかかった金額は参加費から出させて頂きますが、「自分の収入」という考えはありません。あくまで必要経費として明細を出します。
一方、とある個人教室の先生は「発表会の参加費用はいつも多めに頂いて、経費の残りを当然自分の収入としている。会計報告の必要などないし生徒から文句も出ない」と言っています。
「発表会はピアノ講師の収入源」という考え方は、別に間違ってはいません。いわゆる「賞与(ボーナス)」として堂々とお金を頂いて良いと思います。
ただ、それならば会計報告書に「講師日当」などとしてきちんと計上すべきでしょう。
避けたいのは、会計報告をせず「なんだか会費が高く感じる。公立のホールなのになぜかしら。まさか先生が懐に入れちゃってるんじゃあ‥」などと保護者に思われること。
講師が「会費の一部を収入にするのは当然の権利」と考えていても、一般社会ではその感覚は通用しません。
ピアノ発表会という貴重な機会を、保護者にモヤモヤを抱かせる原因にしてしまうのはつまらないもの。
発表会のたびにしっかりとした会計報告書を提出して、保護者の信頼を得ながら教室を運営していきましょう。
ココがポイント
ピアノ発表会の参加費用の会計報告は義務。明細を明らかにすることによって保護者の信頼を得られる。
まとめ
- 選曲に関するクレームは本人の希望を尊重する
- 希望曲が重複したら講師が総合的に判断するのが望ましいが、モメるのが心配ならジャンケンなどもアリ
- 演奏順序に関するクレームを避けるなら進度順とわからない配慮を
- 演奏時間に関するクレームには、一人当たりの上限を決めて、そこからはみ出さない程度のプログラムを組む
- 会費に関するクレームは会計報告書を提出することでほぼ解決する
発表会に関するクレームを受けると講師としてはびっくりしますが、実は保護者側もよくわかっていないだけということが多いものです。
「我が子がたった一人で舞台に立ち、聴衆の前でピアノを演奏する」。そんなシチュエーションに慣れていないため、保護者もまた不安なのです。
ここでものをいうのはコミュニケーション。
保護者とコンタクトを取ってしっかりと話し合い、生徒のために前向きに検討することで必ず解決に向かうはずです。
本記事が、まだ発表会開催に慣れない若いピアノ講師であるあなたのお役に立てることを願っています!
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